BMDとは?

~ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を正しく知ろう~

BMDはどんな病気?

ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は筋ジストロフィーのひとつで、徐々に筋肉が壊れていき、筋力が低下していく病気です。発症年齢は様々ですが、初めは下肢の筋力低下により徐々に歩行が難しくなることが多いです。早くて20歳前後から車椅子を使用し、上肢も不自由になっていく場合もあれば、筋力低下がほとんどなく60歳以降に診断される場合もあります。また、下肢の筋力低下があまりなくても、心筋症を発症することもあるため定期的な検査が必要です。

BMDの原因は?

原因はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)と同じDMD(ジストロフィン)遺伝子の変異です。DMD遺伝子がコードしているジストロフィンは筋形質膜直下に存在し、アクチンと筋形質膜に存在する様々なジストロフィン糖タンパク質と結合して複合体を形成しています(図1参照)。BMDではDMD遺伝子の変異により、筋肉を機械的に保護するタンパク質であるジストロフィンが短く機能的に不完全で量も少なくなるため、十分に機能することができなくなります。その結果、筋肉が壊れやすくなり徐々に筋力が低下していきます。一方、DMDの場合はジストロフィンが完全欠損しますが、BMDとの違いについては、DMD遺伝子のフレームシフト理論により説明されています(図2参照)。

図1 ジストロフィン糖タンパク質複合体
図2 DMD遺伝子のフレームシフト理論

BMDの治療法は?

根本的な治療は現在のところありませんが、歩行期間を延長する薬(ステロイド剤)や、心臓の機能をできるだけ維持するための心臓保護薬(β遮断薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬)など対症療法があります。呼吸機能が悪くなってきたら人工呼吸器によるケアが必要になります。

 

また、リハビリテーションも有効であり、日々のストレッチングにより拘縮予防をすることで、身体機能の維持につながります。具体的な方法については筋ジストロフィーへの対応(国立精神・神経医療研究センター病院)が参考になります。さらに、Hybrid Assistive Limb(HAL®)による歩行改善治療も有効です。

軽症だから治療や定期的な診察・検査はしなくていいの?

症状や経過はDMDと比較すると軽症ですが、健常者と比較すると重症です。治療やリハビリ、定期的な診察・検査は少しでも身体機能や心臓の機能を維持するために必要です。主治医と相談して、出来る限りの治療やリハビリを実施し、定期的に心臓の機能や呼吸機能を検査することで症状の進行を遅らせましょう。

 

また、適切な治療を受けるためには、遺伝子検査による確定診断が不可欠です。今後の臨床試験/治験を進めるために、あわせて患者登録しておくのがおすすめです。