研究情報

筋ジストロフィー患者に対してレスベラトロールを用いた探索的治療研究を実施(2020年11月26日)

筋ジストロフィー症患者(デュシェンヌ型、ベッカー型、福山型)に対してレスベラトロールを用いた探索的治療研究を実施した結果を論文として、札幌医科大学附属病院が発表しました。

レスベラトロールが筋ジストロフィーの治療に有効である可能性が示されており、今後は、治療薬としての実用化に向けて大規模な臨床研究を実施する必要があります。

詳しくは以下のサイトをご覧下さい。

 

レスベラトロールによる筋ジストロフィー治療の有効性についての臨床研究の成果 ~長寿遺伝子の長期活性化による運動機能の向上と筋力の増加~(札幌医科大学)

世界初のBMDモデル動物 東大が作製に成功(2020年8月28日)

世界で初めてヒトベッカー型筋ジストロフィー(BMD)モデル動物(ラット)の作製に成功したことを論文として、東京大学大学院が発表しました。このラットは、ベッカー型筋ジストロフィーの病態進行の解明や治療法開発につながることが期待されます。

詳しくは以下のサイトをご覧下さい。

 

In-frame変異により短縮型ジストロフィンタンパク質を作るラットを作製~世界初となるヒトベッカー型筋ジストロフィー(BMD)モデル動物~(東京大学)

BMD患者は精神障害を発症するリスクがあることを報告(2019年12月29日)

2019年12月29日に国立精神・神経医療研究センターの森まどか先生がベッカー型筋ジストロフィーと精神障害に関する論文を発表されました。以下、論文の要旨になります。

 

ベッカー筋ジストロフィー(BMD)と精神障害の関係についてはほとんど知られていません。そこで、本研究はBMDが精神疾患のリスク因子であるかどうかを明らかにすることを目的に行われました。105人のBMD患者(年齢中央値、37歳)のうち76人(73%)に対しインタビューを実施したところ、6人は発達障害と診断されており、16人が抑うつ状態と判断されました。33/76人(43%)は学校でいじめを経験していました。実際に心理検査を実施した患者さんの平均のIQは正常範囲でした。一方13/40人(32.5%)は抑うつ状態、15/40人(38.5%)は不安状態でした。

これらの結果は、BMD患者が精神障害を発症するリスクがあることを示唆し、身体障害やいじめに対する不安が精神状態に影響を与える可能性があります。親や教師、支援者は、BMD患者の日常の生活環境に気を付けて、ストレスに対処するためのサポートしていく必要があります。

 

原著論文:Psychiatric and neurodevelopmental aspects of Becker muscular dystrophy

論文著者:森-吉村まどか ら

掲載雑誌:Neuromuscular Disorders (2019年12月29日掲載)

URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960896619311137

TRPV2阻害が筋ジストロフィーの心筋症の新しい治療標的になる可能性を示唆(2018年)

2018年に国立病院機構大阪刀根山病院の松村剛先生がベッカー型筋ジストロフィーの心不全治療に関する臨床研究の論文を発表されました。以下、論文の要旨になります。

 

心不全は筋ジストロフィーの最も深刻な合併症です。Transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 2(TRPV2)は、ストレッチ感受性Caチャネルで、傷害された筋細胞や心筋細胞では、TRPV2が細胞膜に移行し、Caの流入を促進することで細胞を傷害します。このことは、TRPV2阻害が心不全の新しい治療標的である可能性を示唆しています。松村先生らは抗アレルギー薬として広く使用されているトラニラストがTRPV2を阻害することを発見し、トラニラストの筋ジストロフィー患者の心筋症に対する安全性と有効性を評価するためにパイロット研究が実施しました。

進行期心不全の筋ジストロフィー患者2人にトラニラスト(300mg /日)を3カ月間投与したところ、心不全マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が減少しました。末梢血単核細胞の細胞膜上のTRPV2発現や、血中の一部の心臓関連マイクロRNA(miR-208a-5p、miR-223-3p)発現も減少しました。さらに、1年以上の長期投与により心エコー所見の改善も見られました。一方で、ワルファリンの増強、腎機能障害の悪化、心拍数の増加、心室性期外収縮などのいくつかの有害事象が認められました。

これらの結果から、トラニラストはTRPV2を阻害し、筋ジストロフィーの患者でも心不全の治療に効果的である可能性があります。注意は必要ですが、TRPV2の阻害は心筋症の新しい治療標的になる可能性があるため、先進医療による多施設臨床研究が実施されています。

 

読者の中には、こうした話を聞くと自分も飲んでみようと思われる方がおられるかもしれません。しかし、筋ジストロフィー、心不全患者での安全性と有効性はまだ確立したものではありません。また、そうしたデータ(エビデンス)を作っていくには、臨床研究に参加いただいてきちんとした管理の下にデータを収集していくことが必要です。新しい治療法を速やかに広めていくためには、患者さんの協力が不可欠なことをご理解いただければ幸いです。

 

原著論文:A Pilot Study of Tranilast for Cardiomyopathy of Muscular Dystrophy(2018年)

論文著者:松村剛ら

掲載雑誌:Internal Medicine(2018年57巻 3号 p.311-318掲載)

URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/57/3/57_8651-16/_article/-char/ja

 

総説:Blockade of TRPV2 is a Novel Therapy for Cardiomyopathy in Muscular Dystrophy (2019年)

論文著者:岩田裕子、松村剛

掲載雑誌:International Journal of Molecular Sciences(2019年20巻16号 p3844掲載)

URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/20/16/3844